【これまでのあらすじ】
悪の総帥モリアーティ教授を降霊術で
呼び出そうとしたホームズたちだが、
ボヘミアに行くことにする。
稀代のハガキ職人アイリーン・アドラー嬢の
ボヘミア亡命を阻止するためだ。
そのためにまず英国外務省で
パスポート発給を申請するのだが…

 
  

パスポートの写真って、
笑って写ってはいけないのか!?

ホームズ、今モリアーティ教授が…
まあいいか。

 
 

しかしなんだな。
パスポート発給って時間が
かかるものだな。 一刻も早く
ボヘミアに行かなきゃならないのに。

前にスイスへ行ってなかったか、
ホームズ。
 
   

まああの時は…。
ワトスン君、 ここだけの話だが、
あの時僕は密航したのだ。

密航?
いくらなんでも外務省でそんな話よくするな。

 
   

わが国からフランスに向けて
ねじの輸出をしている船があってな、
それに乗っていったんだ。
いやあの時は苦労したなあ。

その時パスポートを取っていたら
こんな苦労はしなくても
よかったんじゃないか。

 
   

いまでも横になった時などに
耳からねじが出てくるからね。

まさにしなくてもいい苦労だな。

 
   

まあその時は密航できたが、
今回は国の浮沈がかかった
一大事だからな。
密航などはできないのだよ。

国の浮沈がかかってるなら
国のほうが何とかしてくれるもんじゃ
ないのか。
といってもハガキ職人の亡命ぐらいでは
国は動かないだろうけどもな。

 
   

まったく内閣のばかどもには
困ったものだよ。
事の重要さをわかろうとも
しないのだからな。
…それにしてもヒマだな。
まだ終わらんのかな手続き。

まあ役所仕事だからな。
落ち着いて待てよ。
雑誌でも読んだらどうかね。
 
   

しかし外務省に置いてある雑誌は
何だね。
外交官雑誌ばっかりじゃないか。
「仰天!ビザを電子レンジに入れた
馬鹿っ駐在武官!!」
まったく、くだらん記事ばかりだ。

語呂が悪いなあ馬鹿っ駐在武官。  
 

やはり僕のような高名な探偵には
探偵雑誌が一番だよ。
先月の
「ああ!ピンカートン探偵社に渦巻く
「ネギぬた」嫁姑戦争!! 」 の記事は
大変興味深かったものだよ。

どっちみち一緒じゃないのか。

 
 

ん?おい、ワトスン君、
これは…
ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギスモント・
フォン・オルムシュタイン、
つまりボヘミア国皇太子の記事だ!
外交官雑誌もなかなか役に立つな!

 
おおっ!
今回の事件に少しは関係するかも
しれないな!
 
 



なんだかでっかいグラビアつきだなあ。

確かにすらっとした長身だな。  
 

ちなみに君と比べてみるとこうだよ。

これが同じ人間かね。
 
 
『ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・
ジギスモント・フォン・オルムシュタイン
ボヘミア国皇太子殿下はボヘミア国王
ヴィルヘルムIV世陛下の
御嫡子としてお生まれになられ、
各国語に通じ、帝王学を学ばれる
かたわら、音楽、絵画などにも
優れた才能をもたれ…。』
なんだか生きるのがイヤになってくるな。  
 

『また、
各種雑誌のハガキ職人としても
「とれかけ」という名のペンネームで
一世を風靡され… 』

ハガキ職人なのかよっ!
 
 

『その容姿と華麗に操る各国語、
そして雑誌のノベルティグッズ。
今後、世界社交界での花形と
なられるのは確実であろう。 』
ふーむ。

ノベルティグッズいるのか
社交界。
 
 
しかしだよ、となるとわからないことが
あるのだ。
これによると皇太子も
ハガキ職人だったようだ。
しかも「とれかけ」といえばかなり名の
通ったハガキ職人だ。
そんな自分でも才能のあるハガキ職人が
世界最高とはいえ、ハガキ職人を
亡命させる必要がどこにあるのだ?
たしかに、邪魔だからといって
殺すならともかく、亡命させたりするのは
おかしいな。

 
 

ふーむ、これは僕が思っていたより
複雑な事件なのかもしれないな。

これはますますボヘミアに行って
調べる必要がでてきたというわけだな。
 
 

ああああっ!
思い出したっ!
まだかっ!まだなのかっ!
俺のパスポートはああっ!

まあ落ち着いて外交官雑誌でも
読めよ。
 
 

ちくしょおおおおおっ!
俺のこの熱いビートを
こんな三文雑誌で
押さえられるかああああっ!

うわああっ!!

 
 

お。

あ、おさえられた。

 
 

見たまえ。
アイリーン・アドラー嬢特集だ。

なんと言うご都合主義な雑誌だ。  
 

何とでも言え。
これがアドラー嬢の写真だ。

ほお。

 
 

ちなみになすと並べるとこうだよ。

 
なぜなすと。  
 
ちなみにこれはアドラー嬢が
なすサイズの大きさということでは
ないのだよ。
ますますわかんねえよ。  
 
『アイリーン・アドラー嬢は
サマセット州ヒントン・セント・
ジョージ市にて生まれ、幼児雑誌
「離乳」でデビュー、以後着々と
キャリアを積み、ハガキ職人界の
ビクトリア女王とも呼ばれている。 』

おそれおおくもかしこくも。

 
 

『アドラー嬢の近況・
アドラー嬢は最近猫を飼いだした。
猫の名前はモスグリーン。』

一体何の品種だその猫。
 
 

…またひとつおかしなことに気がついたよ。

今度はなんだい?  
 
猫を飼いだしたばかりの人間が
外国に亡命したりするものかね?

一緒に連れて行ったりしたんじゃないか?
バスケットか何かに入れて。

 
 

しかし最初から亡命するつもりなら
あちらで猫を探したらいいのでは
ないのかね?
猫を引越しさせるのは割りと手間の
かかるものだよ。
犬は人につき、猫は家につく。
これくらいのことを知らないアドラー嬢では
ないはずなのだ。

 
となると、
アドラー嬢は最初から亡命するつもりじゃ
なかったということなのかい?
となると誘拐?
 
 

それにしては
アドラー嬢は自分からフォン・クラム伯爵の
変装をしている。そしてその姿で
何度か公の場に姿を現しているのだ。
皇太子には常にまわりの目が集まっている。
もし誘拐されているのなら、
簡単に逃げられたはずなのだ。
自らの正体をばらすことによってだ。

うーん。
やっとミステリっぽくなってきたなあ。
 
 

それにしても
外交官雑誌とはすばらしいものだな。

まあそのおかげでいろんな情報も
つかめたわけだしな。

 
 

ちょっと定期購読してみようかな。
お、定期購読申し込みのはがきが
ついている。
ワトスン君、ちょっと今から
このはがきを出しに行こうじゃないか。

おい、ホームズ。
パスポート発給を
待たなくていいのかい。
 
 
ああ、もういいんだ。
いいって?
 
  
外交官雑誌のふろくに
ついていたからな。
つけるなあああああっ!  

 

果たしてホームズ達はアイリーン・アドラー嬢の
謎を解き明かすことができるのか!?
つづく!

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