【これまでのあらすじ】
悪の総帥モリアーティ教授を降霊術で
呼び出そうとしたホームズたちだが、
ボヘミアに行くことにする。
稀代のハガキ職人アイリーン・アドラー嬢の
ボヘミア亡命を阻止するためだ。
パスポートも無事取得してボヘミアの王都
プラハにやってきたのだが、
ホプキンス警部が聖ヴィート教会で
行方不明になってしまうのだった。

 
  

ホオオオオプキンスくうううううん!
ホオオオオプキンスくうううううん!
ホオオオオプキンスくうううううん!
ホオオオオオオオオオオオオオオオ
オプキンスくううううううううううううう
ううううううううううううううううん!!!!!!

ホプキンス警部ー!

 
 

アルゼンチンバックブリーカー!

ぐはあああああっ!  
   

貴様の声には悲壮感がないィィィッ!
ホプキンス君を、吹Eが非でも見つけようと、
そういう気持ちの、悲壮感があああっ!

ぐはあああああっ!
だ、だからっ!こんな技を仕掛けてる暇が
あったら、ホプキンス警部を探す努力を
したほうがいいんじゃないかっ!ホームズっ!

 
   

ふむ。
こうした伝統のある寺院には
なにか因縁めいた伝説が
伝わっているものだ。それは真実とは
言えないまでも、真実を解明する
手助けになるかもしれん。
ちょっとその伝説を調べてくれないか。

はあ、はあ、はあ…
なんだそのテンションの
変わりようは…。

 
   

とりあえずそのへんの神父でも
首に縄かけて
ひっつかまえてきてくれ。

いいのかよ首に縄かけて。

 
   

いいんだよ腐れカトリックの神父なんて。
我々は栄光ある英国国教会の信徒
なのだから。

この時代そこまで
キリスト教徒内で宗教対立してないけどな。

 
   
とにかくぎゅっと締め上げて
この教会内の伝説を吐かせるんだ。
もしそれで吐かなかったらムチ打ちだ。
それで吐かなかったら首の縄を
馬にくくりつけて引きずり回すのだ。
そこまでしなくても
教会の観光案内とかに
のってるんじゃないのか。
 
   

いや、そんなことはどうでもいい。

よくないだろ。  
 

僕は一般に聖職者と呼ばれている
権威ある人々の首に縄をかけて
馬につなげて引きずり回したくて
仕方ないという正義と平等に満ちた
心を持っているのだよ。

ただの異常性格者じゃないか。

 
 

僕は自分のことを
東洋の聖人であるところの
ノブヤース・ジロサッブロ・トクガーワの
生まれ変わりではないかと思うのだよ。

 
多分そいつも異常性格者じゃないのか。  
 

さあ、ワトスンクン!
縄と馬を買いに行こうじゃないか!

さわやかに言うな!  

ホームズさーん!
教会の伝説が書かれた
パンフレットがありましたよー!

おお、レストレード警部!  
 
…ちっ。
残念がるな。  
 

いいですかー
読みますよー。

おい、ホームズ。
聞いてやれ。
 
 


あーあいあいあい。
読みたきゃ読めよ。

うっとおしいなあ。
まあ、我慢して読んでくれよ
レストレード警部。
 
 
はーい。
「むかしむかしあるところに
イギリスから来た一見子供に見えて
実は子供のスコットランドヤード警部を
奥から三番目の金色の棺桶の上の
聖像の右腕を下に引き下げると
現れる階段の下につれていった謎の
怪人がいたそうな。」
とか言う伝説が。
って、おいっ!  
 

うーむ、この伝説が
我々のとるべき行動の
ヒントになればよいのだが。

ヒントというか、我々のやるべきことは
奥から三番目の金色の棺桶の上の
聖像の右腕を下に引き下げることじゃ
ないのか。
 
 

それか、それならさっきやったんだが、
それから先をどうすればいいのか…。

階段の下に行くんだろうがああっ!  
 

カリカリするなワトスン君。
せっかくの美しい伝統に彩られた
重厚な教会の雰囲気が台無しだよ。

おまえがホプキンス警部を
さがさんといかんと言うとったんじゃ
ないかああああああああああ!

 
 

ふっ、そのとおり。
しかしあわてていても
物事はうまく行くとは限らないものだよ。
さ、こうしている間にもホプキンス君が
危険な目にあっているかもしれない。
急ぐんだ!
ワトスン君にレストレード君!

ぐがががあががが。

 
 

ううむ薄暗い。
それにひどく臭いな。

何百年も前からある地下室の
ようですからね。
 
 

しかしこれは地下室というより洞窟だな。
この広さはどうしたものか。
水脈まであるぞ。

真っ白な魚や真っ白なタガメや
真っ白なゲンゴロウモドキや真っ白なミズスマシや
真っ白なガムシや真っ白なタイコウチがいますねえ。
 
 
やけに水生昆虫に詳しいな、
レストレード君。
 
オックスフォードでは水生昆虫科を
専攻したんです。
 
 
そうか、そうはいったものの、
君の学歴なんぞに興味はないと
いうことを言っておくよ。
やだなあ、ほめすぎですよ。  
 
むっ。
見たまえ、ここを。血だ。
しかもまだほとんど固まってない。
つい最近流れた血だ。

ははあ、ホプキンス警部の血ですかねえ。

 
 

アンクル・ロックッ!!

あはは、痛い痛い。痛いですよホームズさん。
 
 

そんなことがあるものかっ!
ホプキンス君が僕と、新婚旅行で
ニューカレドニアに行くまでに死ぬなんて、
そんなことあるものかッ!

結婚したらその時点で犯罪ですよ。  
 
よし、こうなったら手分けして探そう。
僕はこの血の跡を追う。
レストレード君は血なんかぜんぜん
ついてないほうに回ってくれ。

僕の行動に何か意味があるんですか?

 
 

もしそっちにホプキンス君がいたら
もうけものじゃないか!

 
なるほどっ!  
 

そしてワトスン君は
そっちの血が流れていてもよさそうな
方向を…
あれ?ワトスン君?

なんだか頭をかきむしって階段の前で
じたばたしてましたよ。
 
 

まったくいざという時に頼りにならん
奴だ。

じゃあどうしますか。

 
 

うむしかたない。とりあえず
君はどこへなりと行ってくれ。
僕は血のあとを追う。

こうしてホームズはレストレード警部と離れ、
教会の地下洞窟を一人進むのだった。
 
 
ホプキンスくーん!
どこだー!
ホプキンスくーん!
しかしその声はむなしく響き渡るばかり。
さしものホームズの顔にも焦りの色が出てきました。
 
  
焦りの色だけではないっ!
この色は喜び、この色は怒り、
この色はときめき、この色はわびさび、
どうだっ!
とにかく気持ち悪いことに変わりはないのである。  

 

一体ホプキンス警部は無事なのか!?
アイリーン・アドラー嬢のことはもはやどうでも
いいのか?
謎が謎を呼ぶボヘミアの醜聞!
つづく!

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