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………。 | |
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おいホームズ。 |
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この呼び出し方はあまりにも英国紳士らしくなくないか? | |
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小学生が友達を誘いに来たんじゃないんだからな。 |
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まだまだ甘いな、ワトスン君。これは相手の警戒心をとくテクニックさ。
いくら用心深い人物とはいえ、なかなか小学生にまで気を配れる人間はいないものだからね。
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いい年をしたおっさんが小学生のふりして声をかけていたらなおさら警戒するだろう。 |
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そんな少年の心を忘れてしまったような相手は願い下げだね 。 |
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相手もできれば出会いたくないものだと思うがなあ。
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そりゃこんな怪しい奴が玄関先で叫んでたら出てこないだろ。 |
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なんだ留守か。 |
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しかしこれほどの屋敷だ。使用人の一人や二人は常にいるはずだろう? |
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そういえば…と言うことは、ミルヴァートンは逃げたのか? | |
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うーむ。モリアーティ教授に告白したものの、その結果を聞くのが怖くなってつい逃げてしまったのかな。
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そんな乙女チックな展開をされてもなあ。 |
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これは困ったな。
ミルヴァートンのことは皆目わからんのだ。唯一の手がかりである奴の屋敷に奴がいないのでは手の出しようがない。 |
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奴がいない隙に屋敷の中を調べてみるというのはどうだい? |
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わっ、な、なんだっ! |
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たとえ相手がどんな男だろうと、不法家宅侵入という手段に出るのはもってのほかだっ!
それが現代の法治国家の大英帝国というものじゃないのかねっ!。 |
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ま、まあ確かにそうなんだが…。 |
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それをよい目的のためならそういった不法行為が許されるとしたら、現代の社会秩序はどうなる!?社会が崩壊することで人々が幸せになれるのかっ!!ひとつの小さな正義のために多くの人々が苦しむことになるなんて、そんなことは絶対に許してはならないことだっ! |
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ど、どうしたんだいホームズ…。
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…それはともかく、このままでは確かに打つ手がないな。
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どうするかね、動き出すのを待つかね。 |
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いや、相手の取る手段と目的がわからない以上、ただ待っていても相手の思うつぼになるだけだ。
ここはひとつ罠を仕掛けてみようと思う。
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罠ねえ。しかしどんな罠を?
モリアーティ教授を罠にしようにも、相手に何かの思惑があったとしたら、罠が罠にならないかもしれないぞ。それにモリアーティ教授が我々に協力してくれるかどうかも… |
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おいっ、ホームズっ!どこに行く気だっ! |
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懐かしいなあ。少年の日のころはよくこうして庭の木に登ったものだったなあ。お袋に見つかってこっぴどく怒られたっけ…。 |
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おーいホームズっ!その木もミルヴァートンの屋敷の敷地じゃないのかっ!不法侵入だぞっ! | |
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おいっ!無視するなっ!
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するするするする。
これで明日の朝には奴は動き出すはずだ。
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明日の朝って…いったい何をしたんだ? |
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なんだいこの黒い液体は?
ずいぶんと甘い香りがするな… |
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え。い、いや、いいよ…。 |
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い、いやだ。 |
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や、やめろ!離せ!ホームズっ!
う、うわあああああっ!
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あ、あ、あ… | |
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甘い。
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そうだろう。それは黒砂糖と酢と泡盛を混ぜた蜜なのだからな。 |
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だったら先に言えっ! | |
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で、この蜜がどうかしたのかい? | |
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ぬる? | |
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……。
何のために? | |
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知らないのか?
こうしてできた蜜を木に塗っておくと、明日の朝にはカブトムシやクワガタムシなどの昆虫が集まってくるんだよ! |
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そうなればその昆虫達をとりにミルヴァートンがやってくるじゃないかっ! | | |
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やってくるかっ!! |
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なんだとこのヒゲッ!
どうしてミルヴァートンの少年の心をわかってあげられないんだっ!
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少年の心があってもそこに蜜を塗ったことをミルヴァートンは知らないじゃないか…あっ! |
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うわああっ!?
その異常に白い肌、ルビーを埋め込んだ
ループタイ、甘樫の杖!
そして邪悪のかたまりのような金色の眼!
お前は、モリアーティ教授だっ!!
どうしてこんなところにっ!? |
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【これからのあらすじ】
ケンカの果てにハドスン夫人の下宿に戻ったホームズ達。
翌朝、下宿の戸を激しくたたく物音で目を覚ます。やってきたのはホプキンス警部とレストレード警部。なんとまたしてもミルヴァートンが殺されたというのだ。しかも昨日ホームズ達が蜜を塗った木に吊るされていたのだった…。
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| な、なにいいいっ!! |
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