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これまでのあらすじ・
ホーシャムのジョン・オープンショーという青年の伯父は、五つのオレンジの種を同封した手紙を受け取った後に変死した。
オレンジの種五つを符牒とする秘密結社の手による犯行だと見抜いた探偵・シャーロック・ホームズだが、オレンジの種五つを符牒とする秘密結社は324あったのだった。
難航する捜査に苦しむホームズとワトスンの前に現れたジョン・オープンショー青年の姿は、まるで天使のように二人の心を癒すのだった。
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まあ天使ではないがね、何となく癒されなくもないが。 | |
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そうだな、気高く美しい芸術性を持った姿と言うべきだな。 |
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それは違うと思うが。 |
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さて、オープンショーさん、だいたいのことは手紙でわかりましたが、細かいことを教えていただきますかな。 | | |
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はい、それはいいんですけども…
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お茶は…? |
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はっはっは、これは気がつかなくてすみませんな、おい、ワトスン君、お茶だお茶。
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アッサムでお願いしますよ。 |
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やれやれ、これがアッサムですか?アッサムの茶の質が落ちたという話は聞いてないんですけどね。まあ私が不勉強なだけでしょうね、はっはっは。
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あ、お茶菓子はないんですか、お茶菓子は。普通お茶を出すと言ったらお茶菓子も出すのが大英帝国の常識、偉大なる伝統ですよね。 |
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単純な線の顔のくせに根性はねじ曲がりに曲がってるなあ。 |
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君の家だろここは。 | |
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ああ、そういえばあったあった。
あれだなあれ。あれをお出ししよう。
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あれ?
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おや、なんですかこれは。 |
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はっはっはっはっは、ご存じありませんか、エノモッドセネクタネイを。
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エ…エノ…はっはっは、いやですねえホームズさん、もちろん存じておりますよ。 |
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そうですよねえ、今や英国社交界を代表するお茶菓子である、エノモッタドノクサネイを、あのオープンショー一族の方がご存じないわけありませんよねええ。 |
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はっはっはっはっは、もちろんですよ、エノドッタネノクサネイ、もちろん存じておりますよ。
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どうぞどうぞお召し上がりください。なにしろエノラッタエノクサネイは新鮮さが命ですからねえ。 |
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はっはっはっはっはっはっはっは…と、ところでナゴフノロロマレイはありませんか。 |
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な、ナゴ…?は、はっはっっはっ、も、もちろんありますよ。
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そ、そうですよねえ、ナゴヌノカロロロバイはエノガッテドサクサネイには欠かせませんからねえ。 |
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あっ得体の知れない赤紫色のぬめぬめとした小動物。 |
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さ、ナゴスノネゴカネバイもこのとおり、かけましたので、さあどうぞお召し上がりを。 |
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う…あ…は…はっはっはっはっは、はっはっはっは、では、いただきます。がりごりねりぬいりううううう…げえっげえっげほほほほうううっ |
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はっはっはっはっは、お気に召していただいたようで何よりですよ、はっはっは。 |
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うう気持ちが悪い。
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しぼった上に投げるなって。
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はっはっは、では、詳しいお話をおうかがいしましょうか、オープンショーさん。
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う、ううう……。
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まずは伯父さんの人となりや経歴をあなたの知る限り教えてください。
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は、はい…伯父は若い頃、アメリカの南部で暮らしていたのです。 |
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南部と言うことはやはりKKKかなあ。 |
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伯父は農場を経営していたのですが、ある時そこから金が出まして一躍大金持ちになったのです。 |
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あれはアメリカの西部じゃなかったかね。
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いえ、伯父は昔のことはとにかく語りたがらない人で…。ただ、その頃からつけていた日記帳があったはずです。
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おそらく伯父の部屋の書斎だと思います。
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え? | |
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オレンジの種を送りつけた組織が、伯父さんの口を封じるつもりなら、そういった日記帳の存在は気にくわないはずさ。
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なるほど、秘密が記されているかもしれないからな。 | |
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こうして君が私の元に相談に来ることを知っていて、その間に家捜しでもしているかもしれない。 |
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えええっ!それじゃ急いで戻らないとっ! | |
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そうですな、一応急いで戻った方がいいですな。私とワトスン君はこれからちょっと調べ物があるので同行できませんが。
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あったっけ。 | |
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さあ、早くしないと盗まれるのは日記帳だけではすまないかもしれませんぞ。 |
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は、はい。急いで帰ります… |
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は、はい? |
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伯父さんの元に送られてきた、このオレンジの種ですが…以前にも送られてきたことはありましたか? |
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は、あのいえ…。どのオレンジの種ですか? |
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君が何とかだっていって、オープンショー青年がお茶菓子にして食べたんだろうが。
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ぬうっ!恐るべき証拠隠滅の手法!
秘密結社の奴ら恐るべし!
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| 秘密結社も気の毒だなあ。 |
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