これまでのあらすじ・
ホーシャムのジョン・オープンショーという青年の伯父は、五つのオレンジの種を同封した手紙を受け取った後に変死した。 オレンジの種五つを符牒とする秘密結社の手による犯行だと見抜いた探偵・シャーロック・ホームズだが、オレンジの種五つを符牒とする秘密結社は324あったのだった。
難航する捜査に苦しむホームズとワトスンの前に現れたジョン・オープンショー青年の姿は、まるで天使のように二人の心を癒すのだった。


オープンショー青年

まあ天使ではないがね、何となく癒されなくもないが。

 
 
そうだな、気高く美しい芸術性を持った姿と言うべきだな。
ホームズ
それは違うと思うが。  
   

さて、オープンショーさん、だいたいのことは手紙でわかりましたが、細かいことを教えていただきますかな。

ホームズ
オープンショー青年
はい、それはいいんですけども…

 
   

なにか?

ホームズ
オープンショー青年 
お茶は…?  
   

はっはっは、これは気がつかなくてすみませんな、おい、ワトスン君、お茶だお茶。

ホームズ
オープンショー青年
アッサムでお願いしますよ。  
   

アッサム…

ホームズ
オープンショー青年

やれやれ、これがアッサムですか?アッサムの茶の質が落ちたという話は聞いてないんですけどね。まあ私が不勉強なだけでしょうね、はっはっは。

 
   
ぐ…ぐぐぐ…。
ホームズ
オープンショー青年
あ、お茶菓子はないんですか、お茶菓子は。普通お茶を出すと言ったらお茶菓子も出すのが大英帝国の常識、偉大なる伝統ですよね。  
   

ぐがががががが。

ホームズ
ワトスン博士
単純な線の顔のくせに根性はねじ曲がりに曲がってるなあ。  
 
ワトスン君。お茶菓子はあるかね。
ホームズ
ワトスン博士

君の家だろここは。

 
 

ああ、そういえばあったあった。
あれだなあれ。あれをお出ししよう。

ホームズ
ワトスン博士 

あれ?

 
 
さあどうぞこれを。
ホームズ
オープンショー青年
おや、なんですかこれは。  

はっはっはっはっは、ご存じありませんか、エノモッドセネクタネイを。

ホームズ
オープンショー青年
エ…エノ…はっはっは、いやですねえホームズさん、もちろん存じておりますよ。  
 
そうですよねえ、今や英国社交界を代表するお茶菓子である、エノモッタドノクサネイを、あのオープンショー一族の方がご存じないわけありませんよねええ。
ホームズ
オープンショー青年

はっはっはっはっは、もちろんですよ、エノドッタネノクサネイ、もちろん存じておりますよ。

 
 
どうぞどうぞお召し上がりください。なにしろエノラッタエノクサネイは新鮮さが命ですからねえ。
ホームズ
オープンショー青年
はっはっはっはっはっはっはっは…と、ところでナゴフノロロマレイはありませんか。  
 

な、ナゴ…?は、はっはっっはっ、も、もちろんありますよ。

ホームズ
オープンショー青年
そ、そうですよねえ、ナゴヌノカロロロバイはエノガッテドサクサネイには欠かせませんからねえ。  
 

はっはっはっは、ぎゅっ。

ホームズ
ワトスン博士
あっ得体の知れない赤紫色のぬめぬめとした小動物。  
 

さ、ナゴスノネゴカネバイもこのとおり、かけましたので、さあどうぞお召し上がりを。

ホームズ
オープンショー青年
う…あ…は…はっはっはっはっは、はっはっはっは、では、いただきます。がりごりねりぬいりううううう…げえっげえっげほほほほうううっ  
 
はっはっはっはっは、お気に召していただいたようで何よりですよ、はっはっは。
ホームズ
ワトスン博士

うう気持ちが悪い。

 
 
うわあ気持ちの悪い小動物が僕の手に!えいっ!
ホームズ
しぼった上に投げるなって。

 
 

はっはっは、では、詳しいお話をおうかがいしましょうか、オープンショーさん。

ホームズ
オープンショー青年

う、ううう……。

 
 

まずは伯父さんの人となりや経歴をあなたの知る限り教えてください。

ホームズ
オープンショー青年
は、はい…伯父は若い頃、アメリカの南部で暮らしていたのです。  
 
ほほう南部。
ホームズ
ワトスン博士
南部と言うことはやはりKKKかなあ。  
 
まあまだ断定するのは早いさ。

ホームズ

オープンショー青年
伯父は農場を経営していたのですが、ある時そこから金が出まして一躍大金持ちになったのです。  
 
なるほど、ゴールドラッシュという奴ですな。
ホームズ
ワトスン博士
あれはアメリカの西部じゃなかったかね。

 
 
その南部時代の話をくわしく聞きましたか。
ホームズ
オープンショー青年

いえ、伯父は昔のことはとにかく語りたがらない人で…。ただ、その頃からつけていた日記帳があったはずです。

 
 
ほほう、それは今どこに。
ホームズ
オープンショー青年

おそらく伯父の部屋の書斎だと思います。

 
 
…うーむ、これはちょっと危険だな。
ホームズ
オープンショー青年
え?
 
 

オレンジの種を送りつけた組織が、伯父さんの口を封じるつもりなら、そういった日記帳の存在は気にくわないはずさ。

ホームズ
ワトスン博士

なるほど、秘密が記されているかもしれないからな。

 
 
こうして君が私の元に相談に来ることを知っていて、その間に家捜しでもしているかもしれない。
ホームズ
オープンショー青年

えええっ!それじゃ急いで戻らないとっ!

 
 

そうですな、一応急いで戻った方がいいですな。私とワトスン君はこれからちょっと調べ物があるので同行できませんが。

ホームズ
ワトスン博士

あったっけ。

 
 
さあ、早くしないと盗まれるのは日記帳だけではすまないかもしれませんぞ。
ホームズ
オープンショー青年
は、はい。急いで帰ります…  
 

あ、ちょっと待ってください。

ホームズ
オープンショー青年
は、はい?  
 
伯父さんの元に送られてきた、このオレンジの種ですが…以前にも送られてきたことはありましたか?
ホームズ
オープンショー青年
は、あのいえ…。どのオレンジの種ですか?  
  
あれ?オレンジの種は?
ホームズ
ワトスン博士

君が何とかだっていって、オープンショー青年がお茶菓子にして食べたんだろうが。

 
 

 

ぬうっ!恐るべき証拠隠滅の手法!
秘密結社の奴ら恐るべし!

ホームズ
ワトスン博士
秘密結社も気の毒だなあ。  

 

どえらいこってす!つづくそうおす!
次回のホームズの活躍があればお楽しみに!

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