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}【これまでのあらすじ】
ある寒い日、ホームズは昔の事件を語り出した。
大学時代の同級生レジナルド・マスグレーヴに関する事件だ。
ある日、マスグレーヴはロンドンベイカー街にあるホームズの事務所を訪れた。
地方選出議員も務めるマスグレーヴ家の執事とメイドがいなくなったというのだ。
愛妻ホプキンス警部のお出かけのキスをうけたホームズは、西サセックスのハールストンに向かうのだったが、鉄道はハイジャックにあってしまうのだった。
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でもそのハイジャックはマスグレーヴ家の事件と何の関係もないんだろう。 | |
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だったらもう省略していいから話を進めてくれないか。 |
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どうしてもこうしても話をさっさと終わらせろと言ってるんだっ! |
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早く話を終わらせても、君に盛ったしびれ薬の効果が早く切れる訳じゃないさ。
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だったらもうあきらめて寝るよ。 |
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それではあまりにも寂しいじゃないか。短い人生、せめてしびれ薬を盛られている間ぐらいは、楽しい話を聞いていたいものじゃないか。
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そもそもしびれ薬を盛られるような人生を想定していないわ! |
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だからやめろって!
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なぜだい、ハイジャック犯だって同じ宇宙船地球号の仲間じゃないか! |
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同じ乗り物に乗っていたくないものを乗り物のたとえで言うな! |
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だから僕はホームズの回想を聞いている立場なんだから話しかけるなよ。 |
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あー、ヒマだなあ、ハイジャックされてみたけどヒマだなあ。 |
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こいつには危機感がみじんも感じられないし。 | |
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さっきから何個食ってるんだお前は。 |
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ハイジャックされてる環境で娯楽を求めるなよ。 |
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違う? |
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一般に思われているほど、人質とハイジャック犯の関係は簡単なものではない。たとえばストックホルム症候群という言葉がある。 |
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ストックホルム症候群?
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監禁犯と人質の間に奇妙な連帯意識がもぐもぐ、うまれることさ。もぐもぐ。1973年にストックホルムで起こった銀行強盗事件で、人質は犯人をかばう言動を繰り返し、後にはもぐもぐ、犯人と結婚する人質まで出たというのさもぐもぐ。 |
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食うか説明するかどっちかにしろ。 |
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これは警察の突入といった、犯人にとって悲劇的な結末は自分にも被害が及ぶことが多い。だからその結果から逃れようと犯人に共感し、警察に対して敵対心を持つようになる、と説明されているのだが、実際には違った側面もある。
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なんだい。 |
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ご、娯楽? |
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さっきも言ったように、犯人と人質の間に共感が生まれると、犯行の失敗率が下がるのだ。だから気の利いた犯人は、共感を生み出そうとするのさ。 |
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そうなのか? |
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そして共感というのは、スポーツや趣味をともにすることで大きくなるものさ。
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いやそうかもしれないが。
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だから、気の利いた犯人は、人質を監禁する時には、チェスやバックギャモンやトランプなどを用意し、人質と楽しく遊ぶものなのさ! |
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そんな犯人がいるか!
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どれがだよ。
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今まで捕まった犯人が、そういった娯楽道具をもっていたという報道を見たことがあるかい?
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いや…ないけど…。 |
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そう…なのかな…。 |
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だから、この犯人が捕まるかどうかは、そこにかかっていると言っても過言ではないだろうな。
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そうなのかなあ。 |
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で、持ってるのか。
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どうやらなさそうだなあ。
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今日の朝、リンゴを食べたものは立てっ!そして別の席に座れっ! |
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フルーツバスケットかっ!
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楽しむな! | |
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では次は、名前にMが入っている奴!…今月、本を一冊も読んでないという奴!…目玉焼きにかけるのはソースより醤油だという奴!
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白熱してるなあ。
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どうした。 | |
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なぜだ!いつまでたっても椅子に座れなかった奴が出てこない!
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列車なんだから座席が減らないのはあたりまえだ!
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とんでもないアホだなあ。 |
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なんだなんだ。 |
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あっさりしてるなあ。 |
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逃走用のものとか用意しなくていいのか。 |
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| あんなので共感するな! |
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