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}【これまでのあらすじ】
ある寒い日、ホームズは昔の事件を語り出した。
大学時代の同級生レジナルド・マスグレーヴに関する事件だ。
ある日、マスグレーヴはロンドンベイカー街にあるホームズの事務所を訪れた。
地方選出議員も務めるマスグレーヴ家の執事とメイドがいなくなったというのだ。
愛妻ホプキンス警部のお出かけのキスをうけたホームズは、西サセックスのハールストンにあるマスグレーヴ家の屋敷に到着し、マスグレーヴ家に伝わる儀式の謎をあっという間に解くのだった。
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解いたのは行方不明の執事だけどな。 | |
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いいんだよワトスン君。謎などというものは解かれてしまえば誰の関心もひかないものさ。 |
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仮にもミステリーだとか言ってるなら解いた課程ぐらいは説明しろよ。 |
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それは無理だよ。だって執事は答えしか書いてなかったし。 | | |
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メモ書き刷らせずに答えだけ書くとは、天才肌だなあ。 |
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僕の見たところ、この執事はたいへん有能な人物だと思うよ。
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そうだろうな。 |
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この儀式文には12世紀の英語が使われている…。今の大英帝国人にそう簡単に読みこなせるものじゃない…。つまり相当な教養を持っている…。
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ふむふむ。 |
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しかし、情報の整理は得意だが、今ひとつ決断を下すといった作業は苦手のようだ。
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そんなことまでわかるのか?
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見たまえ、この答えを書いた後に何度もペンで点を打った後がある。 |
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ああ…って、回想だから見えないんだが。 |
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これは、答えを出したものの、本当にその答えでいいか、迷っている証拠だ。よく考え事をしている時に意味なくペンで点を打つ癖がある奴がいるだろう。 |
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そういえば僕も同じ癖があるな。 |
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つまり普段は決断を必要とする仕事をしていないんだ。 |
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なるほど。 | |
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……。 |
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アホかあっ!! |
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間違ったことのほうが100倍マシだ! |
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まあ下らん茶番はこの程度にして、穴を掘りに行くぞ。 |
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ぐががががが。 |
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せっせ、せっせ。出来たよホームズ。 |
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いや、ただのシャベルだけど。 |
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シャベル…?その金ぴかで宝石がちりばめられたそれがシャベルか?
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うん、そうだよ。 |
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へー、そうなんだ。 |
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でもこれでちゃんと掘れるんだ。ほらほら。
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ざっくざっくざっく。
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そうなのかい?
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考えてもみろ、金は金属の中でもかなり柔らかい方だぞ。それよりは固い鉄で掘ったほうが効率がいいに決まってるだろう。
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でもここにダイヤモンドがついてるんだけど。 |
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地上最高の高度を誇るダイヤモンドならがりがり掘れるよ。 |
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でもなあ…ダイヤモンドは衝撃に弱いから、石にでもぶつかったら一瞬でつぶれるぞ。
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あ、そうなんだ。じゃあダイヤモンドがつぶれたら、何か掘り当てたって事だね。 |
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うーむ、ポジティブシンキングというかなんというか。 |
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がしゃんっ。
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ホームズ!やったよ!何か掘り当てたよ!
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あれっ。これは、石の蓋みたいだね。
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じゃあもちあげるよう。せえの。 | |
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あっ!
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だいぶ前から知ってたけどな。
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よし!中に入るぞ!マスグレーヴ!ランプを持ってきてくれ!
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よいしょよいしょ。
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何って、ランプだよ。 |
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その宝石がじゃらじゃらついたそれが、ランプ?…もういいや。とりあえず行くぞ。
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ちょ、ちょっと待ってくれよ。 |
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この地下室の蓋なんだけど、 |
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この蓋置きに、ちゃんと置かないと。 |
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そんな限定された用途のものまで、黄金と宝石でかざるなあっ!
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| 早く入れっ! |
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