}【これまでのあらすじ】 |
さる筋って新聞の四コマ漫画だろ。
| 情報源が何であろうと差別してはいけないさ。たとえそれが公衆便所の落書きであろうとも。 |
いや差別しろよ。
| 情報がなんであれ、自らの確信を補強してくれる物なら大いに信用すべきなのさ。 |
ともかく結果として、ハールストンに黄色い沼があったことだけは確かだったのだ。 |
| 結果が正しかったということは、僕の方針が正しかったと言うことに他ならない。 |
というわけで黄色い沼だ。 |
わーほんとだー黄色いねー。
すっかり観光スポットとなっているが、昔はどうだったのかね。 |
ええっ!? |
| そんなバカな！普通、週刊「沼」の地元版を読んでいたらわかりそうなものだろ!? |
週刊「沼」？
ほらあった、週刊「沼」ハールストン版の最新号だ。 |
分厚い雑誌だなあ。
| これでこの黄色い沼が前はどんな沼だったか情報がつかめるはずだ。 |
黄色い沼はめずらしいから、きっと話題になっているはずだよ。
| …。 |
| だめだ！ほとんどヴィンセント沼の情報だけだ！ |
ええっ!?黄色い沼より珍しい沼なのかい？
いや、ごく普通ながら、沼の底からガスが発生している量がやや多いという、玄人好みの沼だからなあ。僕が編集者でもこっちを特集するな。 |
| しかし、マスグレーヴ、この黄色さは何かに似てると思わないか。 |
そうだ、ターメリックだ！ |
| そう、おそらく、今回の事件の真相がこれさ…。 |
そうだ、君の家の地下のカレーうどん屋を思い出してみるといい。 |
ええっ、カレーうどんに必要なのは、うどん、スパイス、肉…ネギ…。
| マスグレーヴ、スパイスや小麦粉を作るのに何が必要だと思うかね。 |
そう、本格的なカレー屋ではスパイスを粉にする時に石臼を使っている。小麦粉もまたしかりだ。つまり大評判となるカレーうどん屋に必要不可欠な物、それが石臼さ。 |
確かにあそこには石臼がなかったよ…。
| そう、執事の狙いもそこだったわけさ。奴は、カレーうどん屋の石臼を狙ったのさ。 |
| ただの石臼なら、この週刊「沼」の通信販売でいくらでも買えるさ。でも、君の家にある臼は特別な臼だったんだ。 |
ええっ？
考えても見たまえ、まだ大英帝国がインドを征服する前の状態で、カレーうどん屋を開設できるほど潤沢に、しかも安くスパイスを入手できるかね。 |
東洋の伝説に次のような物がある。臼を右に回すと、大量に物が出てくる石臼の話を。 |
| ヨーロッパに猿がほとんどいないのも、かつて蟹と蜂と栗とともに、臼が猿を押しつぶしつくしたからだたと言われている… |
そんな…
君の家の地下に封印されていた物、それが塩がたくさん出る臼と同じような性質を持っていた臼だったのさ。 |
じゃあ執事はそれを狙って…
| おそらく、それでカレーうどんチェーンの開設を狙っていたんだろう。勤め人にとって、カレーうどん店を始めて独立するというのは夢だからな。 |
おそらくは…沼の底だな。 |
沼!?
| この黄色さはターメリック、つまりスパイスだ。執事は誰にも見つからないように、沼へボートをこぎ出し、臼を回してスパイスをだそうとしたんだ。しかし… |
しかし？
| 彼は出し方は知っていたが、止め方を知らなかった。大量にあふれ出るターメリックのせいで、ボートは沈み、石臼と執事も道連れ、というわけさ… |
……。
| カレー…。まさに、黄色い魔物、だな…。 |
メイドはハールストンの駅前で、ビラ配りをしているところを捕まえた。おそらく執事は「メイドカレーうどん屋」を開くつもりだったのだろう。 |
| 長い間つきあわせてすまなかったな。 |
| ……執事と同じさ…。 |
何が？
止め方は知っているが、動かし方は知らない…まさに僕も執事と同じ過ちを繰り返したのさ…。笑ってくれよ、はは、はは、ははは!! |
笑えるかあっ!!