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ワトスン君!ワトスン君!いるか!いたら返事してくれ! |
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……。 | |
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くそう、ワトスン君がいないと、これから先一体どうすれば…。 |
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……。
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せっかくこの僕が腕によりをかけてシェファーズパイを焼いたのに!
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……。 |
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シェファーズパイとは挽肉とマッシュポテトを優しく包んだイギリスの田舎料理だというのに!
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……。 |
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……。 |
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やはり、いないと分かっている人間に熱く問いかけても出てこないな。
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……。
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これはシェファーズパイではなくてキドニーパイだしな。
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……。 |
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キドニーパイは羊の腎臓をやらかく煮てパイにした物だからな。 |
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……。 |
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……。 | |
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……。 |
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いってねえよ。 |
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なんだかホームズがうるさいからちょっと何とかしてくれって近隣住民の方が呼びに来たんだ。 |
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なんだうるさいって。少々の騒音ぐらいは大英帝国の人間として許容しろよ。お前達はロックの国の人間だろうが。
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ロックはまだ発生してねえよ。 |
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捜査ってなんだい。 |
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ああ、確かどこかの政府のやくにんをしているとか。 |
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まあ君の尺度でいうとだいたいの人間が変人だよ。 |
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そんな兄がロンドン中の変人という変人をあつめたディオゲネス・クラブなのだ。
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嫌なクラブだなあ。
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ちなみにディオゲネスとは古代ギリシャの哲学者で、犬儒派と呼ばれる風変わりな説と行動で知られるのだよ。 |
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犬儒派とは変な名前だね。
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実際犬のような生活をしていたというからそんな名前がついたのだという。つまり、それくらい古代ギリシャの哲学界は複雑だったというわけだよ。
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へえ、それで。
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そのクラブは好きこのんで入った兄のような変人と、その変人に無理矢理入れさせられて、会費を仕方なく払う二種類の会員がいるのだが…。
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別の意味で嫌なクラブになったな。 |
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そんな後者の意味の会員が、メラス氏という通訳なのだ。 |
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今は名前を聞いただけだが、とりあえず可哀想な人なんだな。 |
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メラス氏はギリシャ語の通訳をしているのだが、何でも夜な夜なあるところに連れ去られて通訳をさせられているというのだ。
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なんだい、それじゃメラス氏を保護すればいいんじゃないのか。 |
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しかしメラス氏が言うには、どうもその先で危機に遭っている人がいるというのだ。
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そうなのかい。
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メラス氏は目隠しをさせられているのでよく分からないらしいが、犯人達に何かを強要されている人たちの声が聞こえるらしいんだ。。 |
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うーむ、それなら何とか奴らのアジトを突き止めないとたいへんなことになるぞ。
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そうなんだ、だから僕がそのために日夜修行をしているのだ。 |
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…修行?
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意味は分からなかったけどな。 | |
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たぶん誘拐された人たちがギリシャ語しかしゃべれないから、メラス氏に通訳させようとしてるんだな。
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はあ。
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だから敵のアジトに乗り込んでも、とらわれている人たちと話せないだろう。 |
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だったらギリシャ語を話せる人を通訳にすればいいじゃないか。
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バカ野郎!そんなことをしたら、僕は犯人達と同じことをすることになる!僕に、犯罪者のまねごとをしろというのか!
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してもいいだろ別に。 |
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名探偵が犯人と同じことをしたら、末代までの笑いものだ。だから、僕は、僕なりのやり方で、捕らえられた人とコミュニケーションをとってみせるんだ!
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はあ、それで。 |
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そうなのか? |
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だから僕は、熱意と心をこめた話し方の練習をしているのだ!
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うわあ無駄な着想と無駄な時間。 |
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うおおおおおお!ワトスンくううん!!どうしていってしまったんだああああああああっ!!
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| やかましいわっ!! |
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