「IBMが、北米の大手テレビメーカーフィリップスコンシューマー
エレクトリックのアフターサービス業務を代行する契約を
結んだそうです。 」

「これは数年前からの流れである、パソコンと家電の融合を
見すえた、IBMの新たな戦略の一環といわれています 。」

「そう、だからテレビ部門のノウハウをえて、さらに
業務範囲を拡大しようというのが、IBMのねらいなわけです。 」

「なるほど。」

「あー、今日もヒマやなー。IBMのテレビサポートサービスで
働いてるけど、ぜんぜんでんわかかってこうへんわー。 」

「じりりりーんじりりりーん。あっ、電話や。もしもし、
こちらIBMテレビサポートサービスでーす。 」

「はい、はい、はい。ああ、そうですね、今年の干支は
サル年ですから、猿の貯金箱を上に置いたらいいんじゃ
ないですかね。 」

「あー今日もいい仕事したなー。さ、帰るか。」

「さ、車に乗って帰るか。かち。あれ？かち。
おかしいなー、ぜんぜんエンジンがかかれへんぞ。 」

「まだつづいていたのか。」

「まちがえるかっ！」

「ここはゴビ砂漠。 」

「ここで俺は立派なテレビアフターサポートマンに
なるべく修行をしてきた。たあ！たあ！たあ！
ふっ、だいぶ俺も強くなった。これでどんな
テレビトラブルも解決できるようになった。
いまやおれはテレビアフターサポートマンの王者と
いってもいいだろう。 」

「ぷるるるる、ぷるるるる、むっ、電話が。
もしもし、IBMテレビサポートサービスですが。なにっ？
史上最強のテレビのトラブルを抱えた男がゴビ砂漠に
やってくる？むむむ、これは俺様に対する挑戦だな。」

「あ、プロレスのたとえが出てこなかったんですね。」

「がしっがしっ。さあ、これでうつるはずだ。スイッチを
入れてみるがいい。なにっ!?そんなバカな！
うつらないなんて！ 」

「……。」

「このゴビ砂漠で長い間修行して、あらゆるテレビサポート能力を
身につけたこの俺が、この、ゴビ砂漠で、この俺のホームグラウンドの
ゴビ砂漠で、テレビを修理することができないなんて！ 」

「くそう、ゴビ砂漠の神よ、俺に力を、俺に力を与えてくれ、
ゴビ砂漠の神よ――っ！ 」

「ゴビ砂漠だけに砂嵐ばっかりだという話ではないですか。」

「はっ！そうか！わかったぞ！見える…見えるぞ… 」

「そのテレビ…実は『見えるラジオ』だっ!!」

「…………。」

「さあ、世界中のテレビのトラブルを抱える奴ら、かかってこいっ！ 」

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