「さつきばれ！さつきばれ！空！」
「『さつきばれ』というのは『さつきば』をしろという意味の言葉ではないですよ。」
「納豆が。」
「本来は中国が発祥の納豆ですが、台湾では日本製の納豆が売れているそうです。」
「これは恐ろしいことですよ。」
「なにがですか。」
「納豆といえばなぜか関西では食べられていません。」
「しかしそれに対して関東では納豆が好まれます。このことから、納豆は濃口醤油と薄口醤油、角餅と丸餅、うなぎの背開きと腹開き、毒蝮三太夫と浜村純のように東西文化圏の対立の象徴とされているのです。」
「この両方が納豆文化圏であるということは、関西が両側の納豆文化圏に挟みうちにされるということに！」
「はあ。」
「挟み撃ちにされてしまえばじりじりと納豆を食べるように関西はなっていくでしょう。」
「まあなるかもしれませんが。」
「一度そうなってしまえばあとは雪崩をうつように、薄口が濃口に、うどんがそばに、腹開きが背開きに、満月ポンがナボナに、タージンが三笑亭夢之助にと、文化の一大転換が訪れるのでしょう。」
「そんなことになったら、紅萬子さんは一体どうすればいいのでしょうか。」
「つまりこの台湾での納豆ブームは、関西文化圏を併呑しようとする関東文化圏側の人間が、裏で糸を引いているということです。」
「納豆だけに。」
「ここは逆に関西側からも逆に挟み撃ちする形で、ハワイを関西文化圏に取り込みましょう。」
「ハワイをですか。」
「そうすれば逆に挟み撃ちができ、力の均衡が生まれ、相互の文化が保全されるというわけです。」
「ハワイや台湾の文化はいいんですか。」
「ハワイにたこ焼きを広めるのです。」
「ハワイに何をする気だ。」
「財務省が教科書の無償配布の廃止を提案したそうです。」
「そうなんですか。」
「無償配布による財政負担を削減したいということなのですが。」
「しかしこれからどうするつもりなのですが。」
「みんなの教科書ですから大切にしましょうという教育もできるわけです。」
「なるほどねえ。」
「そうかもしれませんが。」
