双葉博士
なんていうかねえ、張り合いってものがないのよね最近。

高橋委員
なにがですか。

双葉博士
毎日毎日遊びもせずにまじめに研究してさあ、せっかく作った怪人もボロクソに言われてさあ。

高橋委員
仕方ないじゃないですか、ボロクソな怪人なんですから。

レムミ助手
きわめて正論でっす

双葉博士

いいのよいいのよ。怪人がなんて悪口言われたって、ただあたしの悪口言うことだけは許さないわよ。


高橋委員
こういう場合逆じゃないんですか、私のことはいいけど怪人の悪口言うなって。

双葉博士

逆!そう、逆なのよ、私達博士は、世の中の人の発想の逆をつくのが仕事なのよ!それがクリエイティビティ!


レムミ助手
創作沖縄料理っす。


双葉博士

そう!栗とエイとてびち!つまり豚足の煮付け!それをミックスすると、もうそれは臭いがきついの。ほら、韓国では結婚式の時に発酵させたエイが出るって言うじゃない?それをあわせたのよ。てびちって煮込んで臭いをとるんだけど、発酵したエイ入れたら意味ないじゃない?何考えてるのかしら創作料理。

高橋委員
のりつっこみじゃなくて乗ったっきりですか。

双葉博士
いいのいいのどうせあたしの気持ちなんてわかるわけないからお役人には。

高橋委員
そうですね、さっぱりわかりませんね。

双葉博士
かーっ。だからダメなのよお役人は。そうやってわかろうとしない、だから血の通わない行政っていうのよ。改革改革っていいながら、そうした温かみが置き去りにされていくのよ。

高橋委員
置き去りも何も最初からないですよ。

双葉博士
なかったら探しなさいよ。そうやってすぐあきらめるから、日本の…レムミ、ワインないのワイン。なかったら焼酎でもいいけど。

レムミ助手
ないっす。

双葉博士
なかったら探しなさいよ。その机の下あたりになんかあるじゃないの。

レムミ助手
これっすか。なんだろこれ。

双葉博士
なによ樽酒じゃない。ここの役所は国民の血税でこんなの買ってるの?開かれた役所じゃなくて鏡開きしてどうすんのよ。

高橋委員
あ、それ樽酒じゃなくて。

双葉博士
わっくさいくさいっ。なによこれっ。

高橋委員
ぬか漬けです。

双葉博士
役所でぬか漬けしていいって法律誰が決めたのよ!

高橋委員
してはいけないという条文は国家公務員法にはないですね。

双葉博士

なによ法律にかいてなきゃなんでもいいの?法律に人を殺してはいけないって書いてなかったら人を殺すの?


高橋委員
正確に言うと罰せられるとは書いてありますがしてはいけないとは書いてないですね、刑法。

双葉博士
あーもういや。いやっ!そんなんだからぬか漬け漬けるのよ。レムミッ!お茶淹れてお茶っ!なかったら日本酒でもいいわよっ!

高橋委員
お茶ぐらいなら淹れますよ。

双葉博士

きざんでよぬか漬け。


高橋委員
食べるんですかぬか漬け?

双葉博士
食っちゃ悪い?

高橋委員
いえ、いいですけど。じゃあジャスミン茶じゃなくて番茶でいいですね。それともプーアル茶がいいですか?マテ茶もありますけど。

双葉博士
何でそんなにお茶の種類だけあって酒がないのよ。

高橋委員
職場ですから。

双葉博士
なによ普段は酒びたりだけど、いざという時にはすごい勢いで書類の決裁を行なう、素浪人役人だっていていいじゃない。

高橋委員
浪人の真逆の役所ですから。

双葉博士

なによう。つまんない世の中になったわねえ。昭和は遠くになりにけり、か…。


高橋委員
昭和にもそんな人がいたとは思いませんが。

双葉博士
あーあ、どうしてこんなことになっちゃったんだろうなあ…。ぐー…

高橋委員
双葉博士?博士?
ああ、寝てしまったようですね。
あ、望月さん。

望月委員

あ、高橋さん。例の怪人は東京湾上で確保されたようですよ。
あれ双葉博士?


高橋委員
そうですか。
でも双葉博士も今回はチャンスだったんですけどねえ。

望月委員
暴走した酒造怪人ブドウフムジャンヌの分析は結局できなかったんですね。

高橋委員
なんだか分析途中の事故で研究室のぶどうがワインになってぐでんぐでんに。

レムミ助手
運命とは往々にしてそうしたものでっす。

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