続々々々々々々々々々々々々々・智恵子(小)

はじめに

この物語はある作家(家族の強い要望により匿名)の智恵子(小)との深い愛憎の様子を作家本人が記した日記である。
作家自身は発表の場を求めていたが、家族の強い反対により、商業誌での発表は見送られた。そのため千年より作家の匿名、また作家を特定できるような個所の非公開を条件としてその一部をSAKANAFISHにて公表しつづけているものである。

なお、前回、前々回、前々々回、前々々々回、前々々々々回、前々々々々々回、前々々々々々々回、前々々々々々々回、前々々々々々々々回、前々々々々々々々々回、前々々々々々々々々々回、前々々々々々々々々々々回掲載分を ご覧になりたい方はこちらへ。


10月10日

床上。暑気も去り、老の体に良い季節になった故か。本復とまでは行かぬが。智恵子(小)、林檎を剥く。姉の佐和子(編集部注、仮名)が見舞いに置いていった林檎という。姉は何時までも私の好みを覚えぬ。苦笑。智恵子(小)、摩林檎を私が食わぬと怒る。もはや病人でもあるまい。

10月11日

自宅付近散策。楢の小枝が、夏には見えた空を遮っている。私が横になる間に、上に伸びるものがある。老を嘆くべきか、生を讃えるべきか。三時間後、「抱月」。快気祝いと、鱚大根煮に薯蕷飯、鱚天麩羅、酢豚、タンドリーチキン、ラード飯。やや物足りぬか。帰宅後、智恵子(小)猶も摩林檎を勧める。相手にせず床へ。夜半過ぎに空腹。竹輪にマヨネーズ。


10月12日

終日執筆。岩松庵より鰻出前。脂乗り、今一つ。ドミノピザよりピザ。智恵子(小)にも勧めるが、私が摩り林檎を食わぬ限り食わぬと言う。笑止。

10月13日

藪医師橘来訪。脈を取ってはいちいち首を傾げるばかり。此処まで藪とは呆れるばかり。唐揚も持参せぬので早々に追い返す。

10月14日

終日執筆。頗る調子が良く、胡麻油の喉漉しも良い。智恵子(小)、廊下で滑って摩林檎塗れに。滑稽無比。

10月15日

早朝、「抱月」女将を叩き起こす。豚バラのディープフライ、油麺。年寄り扱いした料理ばかり出す。若いと思うは自分ばかりか。風呂に入ろうとするが、浮いてしまい入れず。

10月16日

左腕に瘤。瘤というより何かに似ている。思いだせず。

10月17日

瘤というよりはにきびであると夜半過ぎ気づく。夜空に向かい、叫ぶ。青春。

10月18日

終日執筆。腕のにきびが痛む。にきび薬を買ってくるように智恵子(小)を探すが見つからず。夕日に向かい、叫ぶ。青春。

10月19日

腕のにきびが割れ、脂が湧き出している。仕事にならず。「抱月」に向かおうと、扉に手をかけるが、滑る。出られず。終日ドアノブと格闘。

10月20日

にきび脂の中から、小さな女児が現れる。死んだ姉の佐和子に似ている。佐和子(小)と名づける。佐和子(小)、「貴方が落としたのは金のラードか、銀のラードか、それとも普通のラードか」と聞く。扉を開けるまでそれどころではない。終日ドアノブと格闘。

10月21日

佐和子(小)、「貴方が落としたのは金のパーム油か、銀のパーム油か、それとも普通のパーム油か」。終日ドアノブと格闘。

10月22日

佐和子(小)、「貴方が落としたのは金の胡麻油か、銀の胡麻油か、それとも普通の胡麻油か」。頚動脈にナイフを当てながら言うので答えてやる。「落としていない。」褒美としてラードの胡麻油揚げパーム油ソースを出される。美味。終日ドアノブと格闘。

10月23日

終日執筆。佐和子(小)の手料理、パーム油のラード揚げ胡麻油風味、胡麻油のパーム油揚げラード仕立て美味至極。

10月24日

終日執筆。佐和子(小)の手料理も相変わらず美味藪橘来訪の予定だが現れず。無礼千万。夕刻、玄関でなにやら叫び声と物音。面倒で行かず。

10月25日

終日執筆。佐和子(小)の手料理、美味オブ美味

10月26日

終日執筆。佐和子(小)の手料理、美味インザ美味。このようなときが永久に続けばよい、そう思ったときに佐和子(小)の覆面が外れる。智恵子(小)、正体。驚愕と恐怖と戦慄。

10月27日

終日摩林檎。国光紅玉サンつがる

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