うーむ。。 |
しかしなんだねえ。
| まさか本当になるとはなあ。 |
| どういうことだい？ |
犯罪の天才であるモリアーティ教授が自分で手を下したということも考えられるし。
そうかな？ |
| だって、モリアーティ教授は、明朝ミルヴァートンが吊るされることを予言した後も、4時間にわたって予言をし続けていたんだぞ。 |
| その間にされた239の予言のうち225が的中。そして225件のうち212件は、『スコットランドで大地震が起きるが幸い死傷者ゼロ』とか人間の力でどうにかなる種類の予言じゃなかったしなあ。 |
そっちが当たったことのほうが大騒ぎかもしれないがなあ。
| だからミルヴァートンの件もモリアーティ教授が仕組んだものとは思えないのだ。 |
それにもうひとつあるだろう。
| なんだね。 |
| 思い出す… |
ほら。
思い出せないっ！何も思い出せないっ！ |
ミルヴァートンに記憶を操作でもされたのか？
| やめて！ジェニファーを離して！ 私のジェニファーを返して！ |
| 分割しないで！ローマ帝国を西と東に分割しないで！本願寺も西と東に分割しないで！JR東西線も西と東に分割しないで！ |
| たしかにミルヴァートンは一度、完全な死体となって我々の前に現れ、そして蘇った。だから今回の死も本物ではないのではないかとワトスン君は言いたいのだな。 |
| だが心配することはない。 そう何度も同じ罠に引っかかる我々ではないということを、ミルヴァートンも思い知ることになるだろう。 |
| これは鉄の処女といって巨大な棺桶の中に剣を連ねた中世の処刑道具だ。 |
この中に奴を入れ、上からガソリンをかけて焼いてしまえばさしもの奴もよみがえったりはせんだろう。 |
| そのうえで奴を殺した犯人をさがすのだ。 |
| ホームズさん、ホームズさん。 ミルヴァートンの一応の検視が終わりました。 |
無事検視できたのか。
| じゃー警官の皆さんは盾をもって周囲を取り囲んでくださーい。 |
だってこれくらい警戒しないと、蘇ってきた時にびっくりするじゃないですか。 |
| それで検視の結果はどうなんだいホプキンス君。 |
| なるほど今のところはか。フフッ。 |
| 脱水症状と窒息？ |
| み…みつ…。 |
濃度の濃い蜜を大量に飲まされることによって、体内の水分が体内からしぼりだされて死にそうになったところになおも大量に蜜を飲まされて窒息死ということで…
| ………。 |
おい…。
| …まあ…なんだな…同じように蜜に目をつける人間はいるものだな… |
それですむのかよ。
| それともうひとつですねえ。 |
| ミルヴァートンの口や鼻や耳や皮膚あたりにたくさんのカブトムシやクワガタが集まってるんですよ。 |
…あー、そうか…。
| これなんかはサークワガタムシです。 |
聞いたことないな。
| かつてヘンリー八世があまりのおいしさにサーの称号を与えたというクワガタムシです。 |
なんにでも与えるなよ。
| しかし、ミルヴァートンを恨んでいる人間はそれこそ星の数ほどいるはずだ。そのうちの誰が犯人か突き止めるのは苦労しそうだな。 |
しかし、こんな特別な殺し方をしたということは、何かそのあたりに犯人のヒントが隠されているのかもしれませんよ。
| …そ、そうかなあ。 |
| そ、それにだ。 |
ですから今から24時間体制で監視を行ないます。
| そ、そうだね。それがいいね。きっといいね。 |
| ふぁい。 |