ふたご1

「地球のみんな、オラにちょっとだけ酸素を分けてくれ!!」


ふたご2

「叫ぶ前に息を吸いなさい。」


ふたご1

「イギリスはロンドンのマダム・タッソーといえば、さまざまな蝋人形を展示するところとして有名です。」


ふたご2
「そうなんですか。」

ふたご1

「お前を蝋人形にしてやろうかと言うだけのデーモン小暮閣下と違い、不言実行の精神です。」


ふたご2

「蝋人形よりは相撲に力を入れているでしょうが。」


ふたご1

「そんなマダム・タッソーが、ベルリンに新しく蝋人形館を作ったのですが、そこに展示されたのがヒトラーです。」


ふたご2
「たしかにご当地の有名人ですが。」
ふたご1

「しかし、オープン初日に見物人によって首がもがれてしまったのです。」


ふたご2

「まあ生々しい歴史の人物ですからねえ。」


ふたご1

「一説にはその首は南米に渡り、南極でUFOを作って藤子不二雄に「ひっとらぁ伯父サン(頭)」として漫画化されたといわれています。」


ふたご2

「そんなまとまらない一説は立てないでください。」


ふたご1

「しかし、マダム・タッソーはあきらめません。不屈のゲルマン魂でヒトラー像の再建に立ち上がります。」


ふたご2

「イギリスのマダム・タッソーとさっき言いませんでしたか。」


ふたご1

「そうしてこのたび、新たなヒトラー像が出来たのですが、今回は前回の教訓を生かして、破壊されにくいヒトラー像を造りました。」


ふたご2

「何か特別な材料で作ったんですか。」


ふたご1

「いえ、ちょっと形を変えたのです。」


ふたご2

「形?」


ふたご1

「以前は整えられていた髪の毛は垂れ下がり、前はきちんとしていたネクタイもゆるめられるという憔悴した雰囲気にしたそうです。」


ふたご2

「そんなことで。」


ふたご1

「これで、ヒトラーを憎む人も、憔悴しきった姿でヒトラーが描かれているということで安心するわけです。」


ふたご2
「なるほど。」

ふたご1

「もしこれでうまくいかなかったら、歯を出っ歯にし、靴下を脱げかけにし、右腕を頭の上で曲げ、左腕を曲げて腹部の前に出し、片足を曲げて膝を大地に平行にし、シェーと叫ばせるという、さらに憔悴した姿の改造が予定されています。」


ふたご2

「その人はおフランスはパリの人じゃないんですか。」


ふたご1

「しかし、こうした加工をしても破壊される危険は常につきまといます。」


ふたご2

「それはしかたないですね。」


ふたご1

「憔悴しきったヒトラー像を長い間展示していると、長い間展示されているから、そろそろヒトラー像も十分に休息を取ったはずだ、憔悴しているのはポーズに過ぎないと考えられて、破壊されてしまうからです。」


ふたご2

「これほど納得しがたい理由もなかなか無いです。」


ふたご1

「ですから、そうなる前にヒトラー像には変更の手を加える必要があります。」


ふたご2

「そうなんですか。」


ふたご1

「憔悴の次は泥酔です。泥酔しているみっともないヒトラーなら、なかなか壊そうとは思いますまい。」


ふたご2

「ヒトラーは酒を飲まなかったはずですが。」


ふたご1

「しかし、あまりに長期間展示していると、そろそろ蝋人形中のアルコールが分解されてアセドアルデヒドになり、二日酔いを経て酔いが覚める頃になっているはずだ、泥酔しているのはポーズに過ぎないとして破壊される危険性が出てきます。」


ふたご2

「どこの世界に二日酔いになる蝋人形があるか。」


ふたご1

「そこで次は、電車に乗り遅れて転んだみっともないヒトラーの姿にします。」


ふたご2

「どこに通勤しているんだヒトラー。」


ふたご1

「しかしあまり長く展示していると、ヒトラー像の大地にぴったりついた手が地球をつかんでいることに気づき、ついに世界はヒトラーが手に入れたのかと思い、思わず展示されているチャーチル像やスターリン像が破壊され、ヒトラー像のみが残る結果になる危険性が出てきます。」


ふたご2

「あっさり服従するな。」


ふたご1

「このように、どんな形態にしても破壊される危険性は常につきまとうのです。」


ふたご2

「驚くほど杞憂ですが。」


ふたご1

「そこで、マダム・タッソーには一つのことに気づいてほしい。」


ふたご2
「何ですか。」

ふたご1

「蝋人形は、蝋であると。」


ふたご2

「当たり前だ。」


ふたご1

「そこで、ヒトラー像を熱で溶かしてどろどろにし、やわらかい状態に手を加えてヒトラーの姿を次々に作り出すことで、常に変化しつづけるヒトラーの蝋人形を作るのです。」


ふたご2

「飴細工みたいなヒトラーですが。」


ふたご1

「いや、見た目はむしろもんじゃ焼きに近いです。」


ふたご2
「もんじゃ焼きを人形と呼ぶな。」

9月19日、【おわび】デーモン小暮閣下は、「お前を蝋人形にしてやろうか」と問いかけておられるのであり、「蝋人形にしてやる」という形の発言はされておりませんでした。デーモン小暮閣下が蝋人形を作るという約束を反故にしたかのような表現があったことを深くおわびします。

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