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え、塗り絵ってあの塗り絵かね。 | |
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| あのって、君は一体どんな塗り絵を知っているのかね。 |
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いやどんなっていわれても塗り絵は塗り絵じゃないか。 |
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甘いかね。
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あ、甘塗り絵？ |
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| かつてルードヴィヒ王がお抱えの塗り絵職人に命じて作らせた、世界で最も甘いといわれる塗り絵だ。
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何でまた塗り絵を甘くする必要が。 |
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だからってたすなよ。
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| ただいまノッティンゲン塗り絵美術館の至高の名品を集めた『〜世界はまだ塗りつぶされていない〜ノッティンゲン塗り絵名品展』がナショナルギャラリーにて開催中です。 |
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何かもらってるのかナショナルギャラリーから。 |
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いい大人が塗り絵で買収されるなよ。 |
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| エトナ火山の火口に設置された、世界で最も塗りにくい塗り絵の権利だぞ。 |
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そりゃ塗りにくいというか塗れないんじゃないのか。 | |
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そんなことをふまえて聞くが、君は塗り絵は得意かね。
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断じて得意ではないな。そういわれると。 |
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| やれやれしょうがないな。塗り絵ごときも満足にできない大人がいるとは。君のヒゲはなんだね。無駄ヒゲか。駄ヒゲか。 |
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ぶっ飛ばすぞ貴様。 |
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| この僕が描いたポスターに色をつけてくれという簡単な依頼にすらこたえてくれないようでは、駄ヒゲや粗ヒゲの謗りを受けても甘受せざるをえないよ。
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だったら簡単に言え。 |
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| しかもミルヴァートン殺害犯人を発見する決定版となるというこのポスターなのにな。 |
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え、どういうことだい。 |
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なんだか最近罠ばかり仕掛けてる気がするけどなあ。
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| しかもそれらが成功しているかといえばしていないな。
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まったくだな。 |
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どう違うんだい。 |
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気だけかよ。 |
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どれどれ…。
「第一回・怨！まるごと恨み・ミルヴァートン被害者だらけの憎悪大会！」
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かつて大英帝国社交界に恐慌を巻き起こした恐喝王ミルヴァートンが死んだ！
ここで、その胸に積もったミルヴァートンへの恨みつらみを競わせてみませんか！
優勝賞金1000ポンド！我こそは一番ミルヴァートンに深い恨みを持つという方、どしどし応募ください！ |
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…これでミルヴァートンに恨みを持つ人間が来るとでも思ってるのかい。
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ワトスン君、人間というのはどんなにすましていても欲望の前には弱いものだ。1000ポンドの賞金があるとなったらふらふらとやってきてしまうものだよ。
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でも脅迫されていたことがばれるかもしれないと持ったら来ないんじゃないのか。 |
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| ふっ、それが1000ポンドだけならそうなるがね。
言ったろう？人間は欲望の前には弱いものだと。
この大会はあらゆる欲望を満たす機会を詰め込んだ、欲望のお徳用パックなのだ！
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お徳用パック… |
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まず、会場の夜店で売られているフィッシュアンドチップスがおいしい。
これで食欲。 |
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そんなもんかよ。 |
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| そしていざとなったらどこでも仮眠可能なふかふかフロア。これで睡眠欲だ。 |
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そんな会場行かずに家で寝てろ。 |
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そして何より重要なのは、胸の奥に秘めた秘密を解放したいという欲だ。
多くの重大事件の犯人がついつい重要な秘密を自分からほのめかすのは、この欲がいかに強いものであるかをあらわしているな。 |
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それはわからんでもないがそれだけじゃなあ。
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| 会場に華を添えるひげバニーガールはワトスン君、君に頼んだぞ。 |
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ヒゲッ!? | |
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満たせるか！
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| 問題は優勝賞金の1000ポンドと会場の設営費等諸経費で10万ポンドは必要だと見られることなんだが、ワトスン君払えるかね。 |
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そんな大金あるわけないだろ！
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仕方がないな、警察に頼むとするか。
おーいレストレード君。
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はーい。 | |
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というわけで事件解決のためだ、黙って10万ポンド警察から出させてくれないか。
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無理です。 | |
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| なんだと！
事件解決の絶好の機会だ！こんな機会は普通金では買えないぞ！お得にもほどがあるぞ！
無理だというなら理由ぐらいは言え！
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はい。
さすがに一件の事件にそこまで大金はつぎ込めないのと、それと…。 | |
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すでにこうやってミルヴァートンの死体を囲んで1ヶ月です。その間の人件費だけでとんでもないことになってるんです。 |
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いえ、捜査には慎重さが必要だということで。というわけでまだ殺人事件として認定もされていない状況です。 |
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| くそおっ！
なんてことだ！お役所仕事め！
こうしている間にも犯人はのうのうと逃げ延びているのだぞ！
見ろ！あのミルヴァートンの状況を！
あれが生きているように見えるか！
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あ、ちょっと動いた。 |
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あ、アリに運ばれてるだけでした。
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| とりあえず慎重に慎重に慎重を重ねて。 |
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