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……。 | |
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……………。 |
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おい。
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なんだそのよくわからない音は。 |
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ははは、ワトスン君、知らないのかね。
コカインを。
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おい。 |
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大丈夫さ、20世紀初頭の大英帝国ではコカインはまだ禁止されていないのさ。
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それはそうだが、体にいいものじゃないぞ。
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それにコカインというのは注射したり、鼻から吸引したりするものなんだが…何やってんだ? |
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見てのとおりコカインを口の中で走らせているんだよすがーむ。 | | |
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…なんだその赤紫色のぬとぬとした小動物は。 |
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いやコカインというのは化学物質で。 | |
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え?
…じゃあこのぬとぬととした赤紫色の生物は、いったい…?
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知るかっ!
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ああっ投げ捨てるな! |
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ありがとう、ワトスン君。
僕をコカインの悪習から解き放ってくれて。
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何もしてねえぞ! |
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とんとんとんとんとんとん
ホームズさん、ホームズさん、
お手紙が届いてますよ
とすとすとすとすとす。
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しばらく見ないうちに足音変わってないか、ハドスンさん。 |
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おかしいだろう。 |
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この封筒、中に入っているのは手紙だけではなさそうだな。
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そっちかよ。 |
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何だね君は、ハドスン夫人の足音から始まる事件のほうが、この手紙よりに秘められた事件よりも重大だといいたいのかね。
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い、いやそういうわけじゃ… |
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わあ捨てるなっ! |
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いいんだっ!これでっ!これが君の望んだ世界だろうがっ!さあハドスン夫人の足音がどうしたっ!さあっ! |
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い、いや別に……
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なんだっ!そんないい加減な意見で、あの手紙の事件を闇に葬り去る結果にしたのかっ!
それがお前の望んだ世界かっ! |
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なんだよ世界って!
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返せ!あの手紙を返せ!
あの手紙に秘められた人々の嘆き、怒り、そして救いを求める声を返せ!
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捨てたのはお前じゃないかっ!
…おや?
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あ、さっきホームズが投げ捨てた赤紫色のぬめぬめした小動物がくわえている…。そうか、あの小動物が運んでくれたのか…。 |
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捨てるなっ! |
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みたまえワトスン君。
この封筒にはわずかなふくらみがある。
何か硬い小さな粒のようなものが…五つか… |
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さらっとすすめるなよ。 |
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なになに…差出人はジョン・オープンショー…ホーシャムからか。 |
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大丈夫かなあ小動物。
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伯父の元にこれが入った手紙が届いた後に変死した、というのか。 |
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なんだいそれは。
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オレンジ?そんなものがいったい…。
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おそらくは何かの符牒だろう。察するにこのオープンショー氏の伯父は、この五つのオレンジの種を何かの符牒とする組織に属していた。しかし、何らかの理由で組織に敵対し、そのことに関することで警告を受けた。その警告の内容がこれで、結果は死というわけさ。 |
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すごいな、珍しくすらすらと推理できたな。 | |
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まあこの種の事件というのは、装いが違っても中身は似たようなものさ。
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すごいなあ。 | |
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なんだい。 | |
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うーん。確かに符牒というのは内部でしかわからないものだからなあ。どこの団体がオレンジの種五つを符牒にしてるかなんて、わかるわけがないもんなあ。 | |
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え? |
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アメリカのKKK。狂信的な白人至上主義団体で、有色人種差別の煽動者だ。
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じゃあKKKの関係者が犯人じゃないか! |
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中国の龍華会。元々は反清復明を唱える反政府団体だったが、現在では中国南部の闇経済を一手に取り扱う闇の組織だ。
ここもオレンジの種五つを符牒として使っている。
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え? |
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セルビアの黒手組、ギリシャのフィリキ・エテリア、ドイツの薔薇十字団、バイエルンのバヴァリア幻想教団、 日本の黒バリツ団…僕の調査によると324の秘密結社がオレンジの種五つを符牒としている…。 |
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符牒の意味なしてないぞそれ!
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まあオレンジの種を投げれば、秘密結社に当たる、というわけさ!
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| 何を言ってるんだ君は。 |
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