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これまでのあらすじ・
ホーシャムのジョン・オープンショーという青年の伯父は、五つのオレンジの種を同封した手紙を受け取った後に変死した。
オレンジの種五つを符牒とする秘密結社の手による犯行だと見抜いた探偵・シャーロック・ホームズだが、オレンジの種五つを符牒とする秘密結社は324あったのだった。
ホームズ達のもとにやってきたオープンショー青年は、伯父の日記の存在を思い出すが、その日記を秘密結社に奪われる懸念を抱いたホームズは、オープンショー青年を慌てて家に戻すのだった。
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しかしだいじょうぶかね。 | |
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あーあー♪
アメリカーアメリカはー米国ー。
あーあーメキシコーはー墨国ー♪ |
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…なんだねその歌は。 |
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うむ、オープンショー青年の安否を気遣っていたら、たまたまできた歌だ。 | | |
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本当に気遣っているのかよ。
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何を言うか。
袖すり合うも多生の縁というではないか。
ましてや事件の依頼者だぞ。
気遣わないわけがあっていいわけが無かろう。
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だったらそんな変な歌を歌わなくてもいいだろうが。 |
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何を言っているのだ。歌は心だぞ。
心を痛めた時に痛んだ歌が出てくるのは当たり前じゃないか。
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痛んでいるのはわかっているのか。 |
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あーあーフランスは仏国ー♪
あーあールクセンブルクは盧国ー。
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盧国だったのか。あんまり使わないが。
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和だったのか。 |
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会話になってるぞ、その歌。 |
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あーあーワトスン君ー♪お茶菓子はあるかねー♪
イギリス伝統のー三時のーアフタヌーンティー♪ー |
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歌いながら休むなよ。 | |
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ラーラーかんがえるーことはーただひとつー♪ー
ひとえにーオープンショー青年のー安否のーみー♪ー
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本当かよ。
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でーはー♪新聞に目を通しながらー♪なにかーおかしな事が起こってないかー♪ーしらべるかー♪あーあー歌う安否情報ー♪ー |
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自分が安でも否も腹立たしいな。
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どうした。 |
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ウォータールーでージョン・オープンショー青年がー♪変死体でー♪発見されたよー♪ |
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歌ってる場合かっ!
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あーあー♪ー残念だー♪ー♪ーこれはー♪いわばレクイエムー♪ |
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死んでも死にきれないなあ。 |
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だからもうやめろってそれ。 |
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僕は誓う!
あの前途有望できらきらとして美しく、誰からも愛される好青年を殺害した犯人を絶対に許さない!
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そんな青年だったかなあ。 |
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また歌うのかよっ! |
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ああうざったい。
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うざったいー♪気持ちはー♪僕のほうがー多いということをー♪君は知らないー♪ |
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だったらさっさとやめろ。
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急に変えられるのもなんだかなあ。
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ええっ、でもオレンジの種を符牒に使う団体は山ほどあるって。 |
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たしかにそのとおりだ、だが、僕がオープンショー青年にオレンジの種を食わせただろう。 |
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ぬめぬめとした赤紫色の小動物の体液をかけてな。 |
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そこだ。ぬめぬめとした赤紫色の小動物の体液をかけた時に、ぶくぶくと緑色の泡を出したのだ。 |
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ああ気持ちが悪い。 |
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ぬめぬめとした赤紫色の小動物の体液をかけて、緑色の泡を出すオレンジの種は、あの一種以外にはありえない! |
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誰だ、世界中のオレンジの種にぬめぬめとした赤紫色の小動物の体液をかける実験をした奴は。
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そのオレンジはミナミアメリカクークラックスオレンジ!
ミナミアメリカクークラックスオレンジを警告に使うのはKKK以外にありえないのだ! |
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品種まで決めてるのかよ。
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そう、品種まで決めてオレンジの種を送るのはKKKだけなのだ!ほかの秘密結社はそこまでこだわらないのだ! |
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…じゃあ、ほかの秘密結社がミナミアメリカクークラックスオレンジの種を絶対に送らないって事にはならないんじゃないか。
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……………………・・。 | |
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…とにかくKKKの仕業と言うことで、手を打ってくれないか。
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打てるかっ! | |
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まあ大して進んでなかったけどな。 | |
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あ、ぬめぬめとした赤紫色の小動物が封筒をくわえて…。 | |
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むっ…そうか!紙だ!この封筒の紙は、ボストン米紙! |
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べ、米紙? |
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あるのかそんな紙。 |
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この紙を使った脅迫状を出すのは、KKKの構成員、しかも船員に違いないのだ! |
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そうなのか? |
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和黒山って言ってたけどな。
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そして気持ちの悪いぬめぬめとした赤紫色の小動物はこうだっ!
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| そろそろ慣れろよ。 |
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