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これまでのあらすじ・
ホーシャムのジョン・オープンショーという青年の伯父は、五つのオレンジの種を同封した手紙を受け取った後に変死した。
オレンジの種五つを符牒とする秘密結社の手による犯行だと見抜いた探偵・シャーロック・ホームズだが、オレンジの種五つを符牒とする秘密結社は324あったのだった。
ホームズ達のもとにやってきたオープンショー青年は、伯父の日記の存在を思い出すが、その日記を秘密結社に奪われる懸念を抱いたホームズは、オープンショー青年を慌てて家に戻すのだった。
しかしホームズたちの懸念もむなしく、
オープンショー青年は謎の死を遂げる。
KKKの仕業であるということを見抜いたホームズたちは、オープンショー青年の敵を討つための計画を始める…。
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え、KKKの仕業っていつ決まったんだ? | |
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それは前回のことをよく思い出してみればわかるだろうに。 |
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いや、そんな断定されるほどのことはなかったぞ。 |
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それは君が行間を読むという技術を持っていないからだよ。 | | |
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そうなのか?
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やれやれ、これだから無知蒙昧なヒゲは困る。今までどんな本を読んできたか知らないが、きっと内容もいい加減なんだろうな。
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そんなことはないぞ。僕は結構本を読むほうなんだ。 |
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最近ではスタンダールの「赤と黒」を読んだな。 |
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あとはドストエフスキーの「罪と罰」かな。
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そういわれてもなあ、長い小説だからな、ええと… |
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もういい。ほら、行間が読めてない。
行間を読めてさえいれば、説明にそんなに苦労することはないんだ。 |
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じゃあどういうことなんだか言ってみろよ。 |
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え、いや時代設定や国から何から何まで違うぞ。 | |
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そういう表面の見えるところだけをおっていけばそういう解釈にもなるかもしれないがな。
行間を読めば二つの小説が亀の力で海に潜った男が、海底の城にでもらった箱を開けて老人になる話だとわかるんだ。
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そんなファンタジーあふれる話だったような気はしないぞ。
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だから目に見える部分は瑣末なことなのだ。行間で読めばそういう亀話だとわかるのだ。 |
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なんだよ亀話っていうジャンル設定。
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つまり「赤と黒」と「罪と罰」は同じ小説だということだよ。
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納得いかないなあ。 |
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どうした。
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大発見だ!
「赤と黒」と「罪と罰」との間にも、亀の力で海に潜った男が、海底の城にでもらった箱を開けて老人になる話が! |
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…まさかとは思うが、君の言う「行間」というのは、「赤『と』黒」の『と』のことじゃないだろうな。 |
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おい、どうなんだ。 |
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やかましいっ! |
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ともかく眉目秀麗で聡明で実直だったオープンショー青年の仇を討たねば。 |
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まあ百歩譲ってKKKが犯人だったとしても、君一人でひとつの組織を相手取るのはたいへんだろうが。 |
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うむ、しかもKKKの本部はアメリカの南部だからな。ここは大英帝国のロンドンだ。南部まで行くためには大西洋を越えていかなければならない。旅費もかさむ。そこまでして仇を討ってやる必要はない。 |
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ないのかよ。
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あくまで気軽に、あくまでライト感覚で討てる仇こそが理想だな。 |
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何がライト感覚だ。
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そういうわけでKKKを調べていたら興味深いものを見つけたのだ。
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なんだい。
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このエレメンタリー・ウィーク誌の広告欄だ。見てみたまえ。
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なになに…「キドニー街3番アパートの一室を至急売りたし…連絡乞う…K&M商会」アパートの売買情報かい? |
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まさか…実はKKKの隠れ蓑の会社? |
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と、いうと? |
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むしろ?
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ファ、ファンクラブ?
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そうだ。この広告にピンときた僕がその部屋を調べてみたところ、ファンクラブだということがわかったのだ。 |
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よくこの広告でピンと来たな。
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部屋の中にはKKKへの熱いメッセージや、KKKのメンバーのイラスト、そしてファンクラブ通信… |
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ほんとにファンクラブだなあ。 | |
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こ、このビンは… | |
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そう、中にびっしりとオレンジの種が詰まったビンだ。 |
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なんだか気持ち悪いな。 | |
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確かに見た目は同じだが…。でも、本体ならいざ知らず、ファンクラブがあんな犯行をするかね? | |
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それはわからない。しかし、ここでひとつの重要な証拠を見つけたのだ。 |
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え、証拠って? |
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こ、これは… |
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…おい。 |
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え?
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| ミュージシャンかっ! |
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