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}【これまでのあらすじ】
ある寒い日、ホームズは昔の事件を語り出した。
大学時代の同級生レジナルド・マスグレーヴに関する事件だ。
ある日、マスグレーヴはロンドンベイカー街にあるホームズの事務所を訪れた。
地方選出議員も務めるマスグレーヴ家の執事とメイドがいなくなったというのだ。
愛妻ホプキンス警部のお出かけのキスをうけたホームズは、西サセックスのハールストンにあるマスグレーヴ家の屋敷に到着し、カレーうどんをすすり、マスグレーヴ家に伝わる儀式の謎を解くのだった。
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片手間かよ。 | |
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まあ、庭の木の下に地下室への通路が隠されていることはわかっているからな。 |
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最初に解いた時点ではわからなかっただろうが。 |
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まあそういうなよ。謎が解けてしまった後の謎などと言うものは、犯人がわかってしまった推理小説のように味気ないものさ。 | | |
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まあかなり下手なたとえだがな。 |
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だって推理小説というのは謎を解くものだから、それを謎の比喩に使うのは近すぎるだろう。 |
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ふーむ。しかし比喩が下手だと言われるのは腹立たしいな。
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事実だから腹を立てても仕方ないだろう。 |
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まるで、見ず知らずの奴からお前の母ちゃんデベソと言われた時のように腹が立つ。
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やっぱり下手だなあ。
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しかしなんだ。なぜ母親の悪口を言う時に、母親を取り上げた助産婦や産婦人科医師の手際を批判するんだろうな。 |
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誰も助産婦や産婦人科にまで思いをはせないとおもうぞ。 |
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単に母親の肉体的特徴を侮蔑しているだけだろう。 |
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なんということだ!そのような自分の責任のとれないところを誹謗するなんて! |
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まあ悪口だからなあ。 | |
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悪口自体が卑劣な行為だよ。 |
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ゆるさん!ゆるさんぞ!お前の母ちゃんデベソと言う奴を僕は決して許さない! |
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漠然とした憎悪の対象だなあ。 |
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そこまで決意するな。 |
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あっさりしてるなあ。 |
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うーむ、このどんぶりの底にきざまれた言葉…「大いなる儀式を執り行う時、マスグレーヴの子孫よ、その前に光輝に満ちた宝が現れるだろう…」。どういう意味だろうか…。
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僕にはまったく訳がわからないよ、ホームズ。 |
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いや、ささいなことでいいんだ、マスグレーヴ。
この儀式とか宝に何か心当たりはないか?
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まったく思いつかないよ。 |
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うん、まったく。 |
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あはは、そうかなあ。 |
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やーいやーいバーカバーカ、お前の母ちゃんデベソー!
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子供か。
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は?
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な、なんということだ、過去の自分がお前の母ちゃんデベソなどと発言していたとは…くそうっ!僕は…僕は…
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おいおい。
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僕は僕を許す!この世で最も尊いことは、罪を犯した人間を赦せる心を持つことだ!
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うわあ。 |
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そんなどうでもいいことより、儀式の謎を解くことが必要だよ。 |
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どれだけ自分に甘いんだ。 |
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マスグレーヴ、この器は一体いつから伝わっているものなんだい?
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うーん。そうだなあ。たしかリチャード3世の頃からあるとかいうから… |
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400年以上前か…となると、儀式というのは少なくともその頃から、もしくはそれ以前からあったものと考えていいな。 |
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うーん。
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そういえば…。
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たしか、地下の蔵にその頃から伝わる古文書があるんだって。
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ああ、執事が言ってたんだ。僕は見てないけど。 | |
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あはは、ごめんよう。
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…。
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まったく心に影を落としていないな。
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あっさり見つかったな。 |
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執事は片付けられない子だったからなあ。 |
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うーむ、これかな、儀式というのは…何々…マスグレーヴの血を引くものよ、スヴィルラックの剣を握るものよ、ヨークシャーの龍が眠る時に、その剣を掲げよ… |
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なにがなんだかさっぱりわからないなあ。 |
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え? |
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この執事が古文書の横に書き残したメモどおり、庭の木の下を掘り、謎の地下室へと向かうのだ!
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| 結局謎を解いたのは執事かよっ! |
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