}【これまでのあらすじ】
ある寒い日、ホームズは昔の事件を語り出した。
大学時代の同級生レジナルド・マスグレーヴに関する事件だ。
ある日、マスグレーヴはロンドンベイカー街にあるホームズの事務所を訪れた。
地方選出議員も務めるマスグレーヴ家の執事とメイドがいなくなったというのだ。
愛妻ホプキンス警部のお出かけのキスをうけたホームズは、西サセックスのハールストンにあるマスグレーヴ家の屋敷に到着し、カレーうどんをすすり、マスグレーヴ家に伝わる儀式の謎を解くのだった。

若いホームズ
ワトスン博士

片手間かよ。

 
 
まあ、庭の木の下に地下室への通路が隠されていることはわかっているからな。
若いホームズ
ワトスン博士

最初に解いた時点ではわからなかっただろうが。

 
   

まあそういうなよ。謎が解けてしまった後の謎などと言うものは、犯人がわかってしまった推理小説のように味気ないものさ。

若いホームズ
ワトスン博士
まあかなり下手なたとえだがな。  
   

下手?どういうことだい?

若いホームズ
ワトスン博士 
だって推理小説というのは謎を解くものだから、それを謎の比喩に使うのは近すぎるだろう。  
   

ふーむ。しかし比喩が下手だと言われるのは腹立たしいな。

若いホームズ
ワトスン博士
事実だから腹を立てても仕方ないだろう。  
   

まるで、見ず知らずの奴からお前の母ちゃんデベソと言われた時のように腹が立つ。

若いホームズ
ワトスン博士

やっぱり下手だなあ。

 
   
しかしなんだ。なぜ母親の悪口を言う時に、母親を取り上げた助産婦や産婦人科医師の手際を批判するんだろうな。
若いホームズ
ワトスン博士
誰も助産婦や産婦人科にまで思いをはせないとおもうぞ。  
   
え?
若いホームズ
ワトスン博士
単に母親の肉体的特徴を侮蔑しているだけだろう。  
 
なんということだ!そのような自分の責任のとれないところを誹謗するなんて!
若いホームズ
ワトスン博士

まあ悪口だからなあ。

 
 

卑劣だ!あまりにも卑劣だ!

若いホームズ
ワトスン博士 

悪口自体が卑劣な行為だよ。

 
 
ゆるさん!ゆるさんぞ!お前の母ちゃんデベソと言う奴を僕は決して許さない!
若いホームズ
ワトスン博士

漠然とした憎悪の対象だなあ。

 

たとえこの身が灰になろうと、奴らを倒す!

若いホームズ
ワトスン博士
そこまで決意するな。  
 
では謎を解こう。
若いホームズ
ワトスン博士

あっさりしてるなあ。

 
 

うーむ、このどんぶりの底にきざまれた言葉…「大いなる儀式を執り行う時、マスグレーヴの子孫よ、その前に光輝に満ちた宝が現れるだろう…」。どういう意味だろうか…。

若いホームズ
マスグレーヴ
僕にはまったく訳がわからないよ、ホームズ。  
 

いや、ささいなことでいいんだ、マスグレーヴ。
この儀式とか宝に何か心当たりはないか?

若いホームズ
マスグレーヴ
まったく思いつかないよ。  
 

まったく?

若いホームズ
マスグレーヴ
うん、まったく。  
 

まったく君はとんだうすらバカだなあ。

若いホームズ
マスグレーヴ
あはは、そうかなあ。  
 

やーいやーいバーカバーカ、お前の母ちゃんデベソー!

若いホームズ
ワトスン博士

子供か。

 
 
はっ!
若いホームズ
ワトスン博士
は?

 
 

な、なんということだ、過去の自分がお前の母ちゃんデベソなどと発言していたとは…くそうっ!僕は…僕は…

若いホームズ
ワトスン博士

おいおい。

 
 

僕は僕を許す!この世で最も尊いことは、罪を犯した人間を赦せる心を持つことだ!

若いホームズ
ワトスン博士
うわあ。  
 
そんなどうでもいいことより、儀式の謎を解くことが必要だよ。
若いホームズ
ワトスン博士
どれだけ自分に甘いんだ。  
 

マスグレーヴ、この器は一体いつから伝わっているものなんだい?


若いホームズ

マスグレーヴ
うーん。そうだなあ。たしかリチャード3世の頃からあるとかいうから…  
 
400年以上前か…となると、儀式というのは少なくともその頃から、もしくはそれ以前からあったものと考えていいな。
若いホームズ
マスグレーヴ
うーん。

 
 
何かないか、その頃からこの家に伝わるものは…。
若いホームズ
マスグレーヴ

そういえば…。

 
 

ん?

若いホームズ
マスグレーヴ

たしか、地下の蔵にその頃から伝わる古文書があるんだって。

 
 
だって?
若いホームズ
マスグレーヴ
ああ、執事が言ってたんだ。僕は見てないけど。
 
 

おい!どうしてそれを早く言わないんだ!

若いホームズ
マスグレーヴ

あはは、ごめんよう。

 
 
バーカバーカ!お前の母ちゃんデベソ!
若いホームズ
ワトスン博士

…。

 
 

よし!すぐに蔵に向かうぞ!

若いホームズ
ワトスン博士

まったく心に影を落としていないな。

 
 
うーむ、これだな古文書は。
若いホームズ
ワトスン博士
あっさり見つかったな。  
 

なにしろ床に散らばってるからな。

若いホームズ
マスグレーヴ
執事は片付けられない子だったからなあ。  
 
うーむ、これかな、儀式というのは…何々…マスグレーヴの血を引くものよ、スヴィルラックの剣を握るものよ、ヨークシャーの龍が眠る時に、その剣を掲げよ…
若いホームズ
マスグレーヴ
なにがなんだかさっぱりわからないなあ。  
  
だが、我々のやるべきことはわかっている。
若いホームズ
マスグレーヴ

え?

 
 

この執事が古文書の横に書き残したメモどおり、庭の木の下を掘り、謎の地下室へと向かうのだ!

若いホームズ
ワトスン博士

結局謎を解いたのは執事かよっ!

 

 

あらまあえらいこってす!続くそうおす!
次回のホームズの活躍があればお楽しみに!

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