ふたご1

「『マッチに勝ってください。マッチに勝ってください』少女はそう呼びかけるのですが、誰もレーシングチームを作って近藤真彦のチームに挑もうとする人はいません。」


ふたご2

「少女の動機はなんなのか。」


ふたご1

「博物館を経営されている方々にご注意のおしらせです。」


ふたご2

「あまりいないとはおもいますが。」


ふたご1

「なにげなく美術品を保管していると大変なことになります。」


ふたご2

「大変なことに?」


ふたご1

「最近の博物館はいろいろなものを収蔵しますから。」


ふたご2

「そうなんですか。」


ふたご1

「その中にセルロイド製のものがあると、他の品に悪い影響を及ぼすのだそうです。」


ふたご2

「え、そうなんですか。」


ふたご1

「セルロイドは時間とともに酸性のガスを出し、他の収蔵品を浸食するのだそうです。」


ふたご2

「それは怖いですねえ。」


ふたご1

「これがいわゆる箱の中のミカンがひとつ腐ってしまうと、箱の中のミカン全てが腐ってしまうというやつです。」


ふたご2

「合ってるような微妙に違うような。」


ふたご1

「ですから、博物館の方は収蔵品の材質に気を使わないといけません。」


ふたご2

「そうですねえ。」


ふたご1

「しかし、今回発覚したケースではセルロイド製ではなく、ベッコウ製だと思われていたものが原因だったというのです。」


ふたご2

「あらそんなこともあるんですか。」


ふたご1

「これがいわゆる、箱の中のミカンがひとつイヨカンだったら、箱の中のミカン全てイヨカンになってしまうというやつです。」


ふたご2

「それはもう完全に違います。」


ふたご1

「博物館の材質チェックも、書類上のチェックだけではうまくいかないことが分かります。」


ふたご2

「なかなかたいへんですねえ。」

ふたご1

「書類に『縄文式土器』と書いてあっても、ひょっとしたらセルロイド製かもしれませんし。」


ふたご2

「いやそれはさすがに。」


ふたご1

「『土器』だから土で出来ているだろうという思いこみがこのような悲劇を招くのです。」


ふたご2

「さすがに焼き物とセルロイドぐらいは区別がつきますが。」


ふたご1

「そういう先入観こそが学問の敵の思うつぼです。」


ふたご2

「敵って。」


ふたご1

「敵はいつも収蔵品の崩壊を狙っているのです。」


ふたご2

「だから誰だ敵って。」


ふたご1

「そんな敵が、いつセルロイドを美術品に仕込んでくるか分からないじゃないですか。」


ふたご2

「また回りくどい敵だな。」


ふたご1

「そんな敵の情熱と技術力をもってすれば、土器をセルロイドで作ることなど朝飯前です。」


ふたご2

「招待が漠然としている割りには情熱と技術力の高さは分かるんですね。」


ふたご1

「しかし、博物館側も放射性炭素年代測定など、真贋を測定する技術は持っているという自負はあるでしょう。」


ふたご2

「まあ持ち出すまでもないと思いますが。」


ふたご1

「しかし、敵は常にそれを上回る技術を持っているのだという危機感が足りません。」


ふたご2

「そもそも敵がいるのかという話はしてくれないんですね。」


ふたご1

「たとえば縄文時代のものと同じ年代測定が出たからといって、油断は出来ません。」


ふたご2

「そうですか?」


ふたご1

「長い歴史を持つ敵のこと、縄文時代から敵組織が仕込んでいた可能性もあります。」


ふたご2
「歴史が長いにもほどがありますね敵組織。」

ふたご1

「その時代に土器に偽装したセルロイドを作られれば、年代測定では本物の土器と区別がつかないでしょう。」


ふたご2

「というかそんな時代にセルロイドを作るってどんな超文明ですか。」


ふたご1

「そんな敵なら、あらゆるものをセルロイドで作ることが可能でしょう。」


ふたご2

「そうかもしれませんが。」


ふたご1

「だから、あなたの博物館の館員も、セルロイドかもしれないのです!」


ふたご2
「これはだいぶしょうもない警告ですね。」

12月2日、せるろいろ。

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